a.
沈んで来た所が丁度、海の底だった。 誰かを呼ぶように泣く子供の泣き声が、まず耳に届く。 次に、足元で秒針を刻む、昔からある時計が目に付いた。 静寂が仁王立ちをし、暗雲の向こうから泣き声は聞こえる。 まるで四方を壁に囲まれているように、息苦しい。 よく目を凝らすと、目の前に色を失った本棚がある。 誰かを待ちくたびれて、そのまま時が流れて行ったような本棚。 そこから一冊、文庫本を手に取ってみる。 暗く、題名が読みづらかったが、そこには「a」と書かれていた。 トイ・ストーリーに出てくるバズ・ライトイヤーは、「無限の彼方へ、さぁ行くぞ」と言い残して、飛び立った。 なにも「無限」を目指そうとは思っていな…